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守り人シリーズ

もうすっかり暑さも身を潜め昼でも涼しい日がありますが、いかがお過ごしでしょうか。

やはり秋と言えば食欲?スポーツ?芸術?読書?行楽?

まぁ聞くまでもなく専ら食欲でしょう。サンマや松茸、栗、ブドウ、リンゴ等々。「秋」という名のもとにいつもよりちょっとくらい多く食べたり間食しても許してもらえる・・・かもしれません。僕は年中秋なので本当に秋になったところで許してもらえませんが。

とかなんとかどうでもいい話は置いといて今日の内容は食欲ではなく読書!

やっぱり秋の夜風に当たりながら、どっかの草むらにいる鈴虫かコオロギかはわからないけれどもあの鳴き声を聞きながらする読書は捗ります。

皆さんはどんな本を読んでいますか??

東野圭吾?伊坂幸太郎?森見登美彦?恩田陸?有川浩?宮部みゆき?桜庭一樹?最近は百田尚樹なんていうのもありますが、今回はどれも違います。

では早速行きましょう(笑)

精霊の守り人(守り人シリーズ)  

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 今日紹介したいのは上橋菜穂子著の精霊の守り人を初めとする守り人シリーズ。

ジャンルとしてはファンタジー。

一応本屋の「店員さんお薦め」とか「夏の何ちゃらフェア」なんかには必ずと言っていいほど置いてある本です。

 しかし僕の周りでですがこれを読んでいる人は誰もいないんじゃないかと。

というのも「何か本でも読もうか」と思って本屋に行った所で、平積みでこれが置いてあったとしても多分中々手に取らないでしょう。ネームバリューから表紙の絵からとにかく手に取りたくなるレベルでは流行の作家の話題本には負ける気がします。

 帯に「最後の5行での衝撃!!」「徹夜必至!!!」「この結末は誰にも話さないでください」みたいなことも特に書いていませんし、仮に少し気になって手にとってもシリーズ物なので取った本も置いてしまう可能性があります。

ただ先に言っておきます。名作です。かなりの名作。

あらすじ  

シリーズ物なので一作目のあらすじを。

100年に一度卵を産む精霊に卵を産みつけられ、〈精霊の守り人〉としての運命を背負わされた新ヨゴ皇国の第二王子チャグム。母妃からチャグムを託された30歳を過ぎた女用心棒バルサは、チャグムに憑いたモノを疎ましく思う父王と、チャグムの身体の中にある卵を食らおうと狙う幻獣ラルンガ、ふたつの死の手から彼を守って逃げることになるのだが・・・。水の守り手とは何なのか? 夏至祭りに隠された秘密とは? 多くの謎を秘めて、物語は人間の住む世界「サグ」と精霊の住む「ナユグ」の問題へと発展していく。

 あらすじを読むと「造語がたくさんあってしんどい」とか「子供向けではないのか?」とか「フィクションを読むにしてもこういうファンタジーはちょっと・・」なんて思う人もいると思います。実際これが発売された頃は本屋の棚分けとしては「児童文学」でした。

 今では文庫化され小説の棚に置いてありますが、実際今でも児童文学のコーナーに行くと怪傑ゾロリや探偵夢水清志郎シリーズなんかと一緒に児童文学版が置いてもあります。

↓ちなみに図書室によく置いてある夢水清志郎シリーズ

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 しかし僕は文庫本から読み始め、ハマりだしてからこれが児童文学として出ていた本だと知り驚きました。何故なら読んでみるとわかりますが、「何故児童文学というジャンルに入った!?」というほどの緻密な設定と重いテーマだからです。

緻密な設定  

 読みやすい文体と著者が文化人類学者であり大学で児童文学の授業を務める教授でもあるということも相まって、読めば読むほど作品に出てくる物の自然や食べ物の匂い、国ごとに違う雰囲気と戦いになった時の臨場感を肌で感じられますし、緻密な世界設定があるので各キャラクターのセリフからオリジナルの風習や文化まで全てに説得力があります。

 その上、緻密に設定しているのにも関わらず読み易い文体なので、読んでいるうちに「この作品の世界が実際の世界のどこかにあったのではないか」と思えてくるほどです。

 現実が舞台の作り話でも説得力がなく、ただの都合合わせのように見えるものがある中、完全にオリジナルの世界とオリジナルの文化がある物を作り、それがまた「実際に存在したのではないか」とまで思わせる語りぶりは相当だと思います。

 またファンタジーが苦手な人の理由に「欧米設定のファンタジーが苦手」というものがあります。キリスト教概念が下地の物ですね。例えばロードオブザリングやナルニア国物語などなど。

 しかしこれは同じファンタジーでもアジア系のファンタジーです。なんかアジア系のファンタジーっていうと少しバカっぽいですが(笑)主に日本をはじめアジアなどの文化風習やアボリジニの考え方を下地にしていますし、世界構成もアジアや中東調になっているので欧米系の物が苦手な人でも入り易いですし、親しみ易い物になっています。

 そしてかねてから僕が映画評でも言っていた「人の情に訴えられるものがあるか」という所もバルサの生き様とチャグムの成長と共に周囲を巻き込んで出てきます。

重いテーマ  

 これは作品ごとに変わりますが、箇条書きで書くと

生きることの難しさ。子育て。貧富差別。異文化論。宗教論。復讐。政治。戦争等々。

 児童文学とは思えないほどの重い内容をシリーズ毎にテーマを変え、時には混ぜて提示していきます。

たぶん子供が読むと「悪いやつ→だから守る!倒す!」という簡単な図で楽しめますし、大人が読むと先ほどのこういったテーマが読み取れてくるので大人でも楽しめるということになるのでしょう。

実際僕も大学生の時、読み進めながら自分の生き方や人と接する上で大事なことについて考えさせられました。Amazonのレビューなんかを読むと50歳の人が熱くなったというのも見受けられます。

・・・・・・・それにしてもここまで来ると「大人でも楽しめる」っていう表現は良くないですね。大人だからこそ読まないといけないファンタジーです!!!

国際アンデルセン賞作家 賞受賞

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 守り人シリーズはその緻密な設定と巧みなストーリーテイリングで日本では既に数々の賞を獲得していましたが、2014年に児童文学界においてのノーベル賞・アカデミー賞と呼ばれる国際アンデルセン賞を日本人として20年ぶりに獲得しました。「スケールの大きな独自の世界を作りあげる、たぐいまれな才能を有する物語のつむぎ手」と評され、世界の言葉や文化が違う国でも評価された証でもあります。これは日本でも大きく報じられました。

NHKで綾瀬はるか主演で実写化  

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 また今年の7月に2016年春から3年に渡って全22回で全シリーズを実写化、放送すると発表されました。主人公バルサを演じるのは綾瀬はるか。脚本は大河ドラマ風林火山の大森寿美男。4Kで撮影されるとのこと。話題性がうかがえます。

 ここまで読んでみても、「住ちゃんが推しててもどっちみち自分はファンタジーは読まない」という人はこれ以上読んでも面白くないと思います(笑)ここからは少しでも興味を持ってくれた人の為に少し内容を詳しく。

物語の構成  

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 守り人シリーズは話の内容から大きく分けて二つの話があります。

一作目の精霊の守り人は女主人公のバルサが皇子のチャグムを助ける話なので話の内容も二人の話です。

 しかし2作目以降からはバルサが主人公の話とチャグムが主人公の話に別れます。

バルサが主人公の話はタイトルの最後に「〇〇の守り人」と付き、チャグムが主人公の話は「〇〇の旅人」と付きます。

[実際のタイトル]

精霊の守り人→闇の守り人→夢の守り人→虚空の旅人→神の守り人→蒼路の旅人→天と地の守り人→[番外編]流れ行く者→炎路を行く者/春の光

守り人の話は主にバルサの過去の因縁や世界の在り方、師匠の生い立ちなど主に世界の成り立ちや各キャラクターの掘り下げが語られます。バルサの壮絶な過去と生き様やそれを取り巻く師匠や幼馴染の人たちの気概の強さに心打たれっぱなしです。

 旅人の話は皇子チャグムが主人公になるので王としての器の形成、自国に忍び寄る大国の脅威などが語られます。一度は王になんてなりたくないと考えていた皇子チャグムが世界を見て、大切な人ができ、自分が背負う運命に嘆きながらも、自分は王として民と国を治めていかなければならないと成長していく様は本当に胸が熱くなります。

 精霊の守り人以降別れていた女用心棒バルサの物語と皇子チャグムの物語は最後の「天と地の守り人」で再び合流し、世界中を巻き込んだ壮大なエンディングを迎えるという話。

 とりあえずメインストーリーは7作ありますが、「7作もある」と考えないで第一作目の「精霊の守り人」だけでも良いので読んでください。正直な所、精霊の守り人だけでも十分綺麗に仕上がっていますし、作品としても名作なのでそこで読み終わってもらっても結構です。しかし多分精霊の守り人を最後まで読み終える頃にはさらに深く知りたいという欲が止まらなくなっていると思います。そうなれば続きを買って読んでみてください。

アニメ:精霊の守り人  

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 また、だんだん気になってはきたけど、なかなか本を読むのがしんどいという方は精霊の守り人だけアニメ化しています。こちらはProduction I.Gという日本のアニメ界では最高峰の制作会社が作っていますし、何より監督が攻殻機動隊SACシリーズの神山健治です。Production I.Gと神山健治だけでも名作確定ですがそれが精霊の守り人を作るのだから面白くないわけがありません。むしろ自分のアニメベスト5を挙げるとしたら必ず入るほどの名作に仕上がっています。なので本を読むのがしんどい方は試しにアニメ版を見てみるのもありでしょう。

 いや~~~、それにしても恵まれ過ぎてるわ守り人シリーズ!!自分で記事書いてて思うけど、本自体様々な形態で出版されて、アニメもProduction I.G制作で監督が神山健治。記事には書いてないけど漫画化もされてるし、全シリーズ実写化される上に主演は綾瀬はるか!!終いには国際アンデルセン賞!!!!ここまで恵まれてる上に、どの形態の作品も質的にどれもが名作に仕上がってるものは多分他にありゃしまへん!!!

は、すいません。素が。

とにかく!!!!  

 イギリスにルイス・キャロル、J・R・R・トールキン、J・K・ローリングがいて、アメリカにはライマン・フランク・ボームがいる。じゃぁ日本には誰がいるの?!

上橋菜穂子がいます!!!日本のファンタジーはこれ抜きには語れません。

是非一読を。

長くなりましたが最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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